海外在住が長いのに日本の2級FP技能士資格を持っていて、資産運用にもちょっと携わっているトニー(@enjoyhklife)です。
年金2000万円不足問題をきっかけに、年金以外での老後資金を作る手段としてNISA(ニーサ)やiDeCo(イデコ)が注目を浴びています。
NISAにしてもiDeCoにしても、その税制優遇や節税効果が強調されていますが、どちらも積立対象となるのは、株式や債券、投資信託などの金融商品です。
どちらも公的年金とは違い、つみたてや投資の運用結果は自分で責任を持たなければいけないため、最低限「資産運用」に関する知識を持たなければ、口座の時価が変動するたびに心配してしまったり、本来しなくてもよい無駄な取引をしてしまうことになってしまいます。
ここでは、1973年に発刊されてから45年以上読み継がれていて、全米で150万部を超える「資産運用のバイブル」ともいわれる一書「ウォール街のランダム・ウォーカー 株式投資の不滅の真理」を元に、運用について考えてみたいと思います。
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この本は、資産運用をするすべての人に読んでもらいたいのですが、原著9版での475ページもあるので、サクッと読める本ではありません。
また、内容も初心者向けというわけでもないので一定の予備知識は必要になります。
しかし、「株式投資とは」「バブルとは」など、興味深い内容が多く、読み物としてもとても面白いのでお勧めします。
Contents
NISAやiDeCoで資産運用をする上での重要なポイントとは何か
株式投資によって堅実に富を増やすことは、そんなに難しくはないのだ。(中略)幅広く分散された株式ポートフォリオを買ってじっと持っているだけで、長期平均的にはかなり高いリターンを享受することができる。ただ、気をつけなければいけないのは、一夜にして大金持ちになれるかもしれないという投機の馬鹿騒ぎの中で、大切な財産を賭けたくなる誘惑に負けないことだ。
NISAでもiDeCoでも最初に迷うのは、「商品が多すぎて、何を買ったら(積み立てたら)いいのかよくわからない」ということだと思います。
上の引用において大事なポイントは、以下の2点です。
- 中身が分散された商品を買う → 上場投信(ETF)や投資信託
- じっと長期で持ち続ける → 長期保有
つみたてNISAの場合、積み立てできる商品がすでに厳選されていますから、比較的選びやすいかもしれませんが、一般NISAやiDeCoにおいて、王道となるのはETFや投資信託への積立です。
そして商品を決めて積み立て始めたら、相場が変動したからと言ってすぐに売ったりせずに持ち続けること。
また、他に短期間で大きく上がっているような個別株などがあったとしても、それにすぐに飛び乗ったりしないことです。
相場やある商品が大きく上がっているときには、メディアや周囲のざわつき始め、それに投資をしないことが損であるように感じてしまいます。
こうした集団行動の結果は、個人投資家に対して壊滅的な打撃をもたらすことになる。確かに株式市場は長期平均的には高いリターンをもたらしてきたが、実際に平均的な個人投資家が手にしたリターンは、それを大幅に下回るものにとどまるのだ。それというのも、投資家は熱狂的なブームで相場がピークにさしかかる頃に、本格的に投資支度を購入する傾向が強いからだ。
笑い話かもしれませんが、あなたが話をしている銀行員や証券マンが一生懸命すすめてくる商品は、それまでの数年間は堅調にリターンを出していたでしょうから、資料を見れば魅力的に見えるかもしれません。
しかし、銀行員や証券マンがすすめる時点で、すでに値段はピークに近づいていて、そこから何らかのきっかけで大きく下落する可能性を持っていることが往々にしてあり得るのです。
また、相場が下落しているときは、もうずっと上がらないのではないかと感じ、損をしてでも売りたくなってしまいます。
そして自分が売却した後に、往々にして相場が反発して上昇し始めるのです。
ですから大事なのは、一度決めたら相場の状況がどうなろうとも忍耐強く、こつこつと積み立て続けることなのです。
ドルコスト平均法:積立投資の効果を感じるためには、どのような相場環境でも続けることが大事
一般的に言って、投資機関が例えば二〇年以上とかなり長期間でなければ、株式から平均的に得られる高いリターンを手にすることは難しい。
積立を長期間にわたって続けようとすると、必ず途中で相場の下落局面を経験します。
記憶にあるところでは、2008年10月のリーマンショックがありますね。
現在(2019年)も、米中貿易摩擦などによる要因から、株式相場は不安定な動きをしています。
ざっくり言って株式相場は10年ほどのサイクルで動いているともいわれるので、もしかしたら今後は下落相場になってしまう可能性がないとも言えません。
そのような一見、だれもが株式投資から遠ざかってしまうような時に、もしNISAやiDeCoをやっていたらどうしますか。
積立をやめてしまったり、売ってしまいますか?
ドル・コスト平均法が成功するかどうかの鍵は、市場全体が弱気になっている時にもあなたが平常心を失わず、勇気を奮って等額の追加投資を続けられるかどうかにある。いくらあなたが一時的に悲観気分に陥ろうが、金融や世界の情勢がいかにみじめになろうが、ひとたび始めたこの投資戦略をやめてはいけない。やめたが最後、市場が急降下した時に、少なくともいくらかは超安値で追加の投資ができるという保証を放棄することになってしまう。
ドルコスト平均法とは、決められた金額を例えば毎月、決められた日に買い付けていく、という積立をすることです。
これによって、価格が高い時には少なく、価格が安い時にはたくさん買い付けて、結果として買い付け価格を平均化させてくれます。
価格 | 購入金額 | 購入株数※ |
100円 | 10,000円 | 100株 |
110円 | 10,000円 | 90株 |
95円 | 10,000円 | 105株 |
80円 | 10,000円 | 125株 |
75円 | 10,000円 | 133株 |
90円 | 10,000円 | 111株 |
120円 | 10,000円 | 83株 |
120円 | 70,000円 | 747株 |
(※小数点以下は切り捨て)
上の表の場合、最終的な時価は120円×747株で89,640円です。
100円で始まった価格が途中、25%も下がって75円までになりましたが、ずっと積み立てた結果、最後は120円になりました。
この場合、積み立てた金額は70,000円ですが、時価は89,640円です。
19,640円(+28%)もの利益が出ているのですね。
それを、相場が下がったからと言って止めてしまえば、せっかく安い値段でたくさん買えるチャンスをみすみす逃してしまうことになるのです。
決めた金額を積み立てていけば、相場が下がった時には安い金額でより多くの株数を購入できます。
このメリットを生かしたのがドルコスト平均法なんですね。
NISAやiDeCoではライフサイクルにあった積立を
リスク許容度という言葉をご存知でしょうか。
投資家がどれだけのリスク(保有資産の時価の変動)を許容できるか、ということですが、これは皆さんそれぞれの、積立期間、目的や期待するリターン、経済状況によっても変わってきます。
ただ、一つ言えるのは、若い人は長期間積立運用できるので、多少大きなリスクをとっても良いですが、積立の終盤に差し掛かっている年齢層の方は、あまり大きなリスクをとるべきではない、ということです。
積立期間が長ければ、多少相場が下落してもドルコスト平均で株価が安いときにたくさん買って、その後相場が戻って上昇数まで待つことができますが、高齢の方はそうはいきません。
積立の終盤でリスクをとると、万が一、引き出すときになって相場が大きく下落してしまったら、大きく利益を損なってしまいます。
ここでいう、「リスクをとる」というのは、積立する商品の中に於ける株式の割合をどうするか、を考えることといえるでしょう。
株式こそが、長期投資において大きなリターンを生み出す可能性のある商品だからです。
しかし、リスクとリターンは表裏一体。
大きくリターンを生む可能尾性があるということは、反対に大きく下落する可能性もある、ということです。
じゃあ、その割割合をどうすればよいのか、ということですが、以下のようにしてはいかがでしょうか。
ポートフォリオに占める債券の組み入れ比率を自分の年齢と同程度にするのが良いのではないかと思う。
年齢 | 債券比率 | 株式比率 |
30歳 | 30% | 70% |
40歳 | 40% | 60% |
50歳 | 50% | 50% |
60歳 | 60% | 40% |
債券は、利払いを出しながら緩やかに変動するので、債権の割合を増やすことで全体の時価の動きが安定します。
年齢を重ねるごとに債券の割合を増やしていけば、徐々に積立時価の動きが安定しますので、変動のリスクを抑えることができるのです。
まとめ
NISAにしてもiDeCoにしても、税制優遇についてはよく言われますが、どのように運用をしたらよいかについて説明されているものはあまり多くはないのではないでしょうか。
税制優遇があっても、積立運用がうまくいっていなければ、税制優遇のメリットを享受することができなくないます。
それほど、積立(運用)の中身というのは大事なのですね。
しかし、どの商品を選べばいいかわからない、面倒だ
というのが正直なところではないでしょうか。
それも、上記のように、全体の割合(アセットアロケーション)と年齢(リスク許容度)を考えて積立をすると、年齢相応のリスクで安心して積立をするウことができます。
是非、NISAやiDeCoを始める際の参考にしていただければ幸いです。