香港デモ

【香港デモ】2019年香港区議会議員選挙の結果・影響をわかりやすく解説

香港在住15年以上、国際結婚で英語、中国語(普通話・広東語)を中途半端に操り(笑)、香港が第二の故郷になっているトニー(@enjoyhklife)です。

当サイトでは、2019年6月から始まった香港デモの状況をまとめてきました。

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そして、この香港デモを総括するイベントともみられていた香港区議会議員選挙が11月24日に行われました。

もともと区議会議員は地域に密着した立場の人たちで、立法会議員(日本でいう国会議員)と比較し、実質的な権限はほとんどありません。

区議会は、予算の承認や条例の制定といった議会に必要な権限をもっていない。従来は諮問機関として位置づけられ、実質的な権限がないため、行政に対する影響力は小さい。公共施設(文化や娯楽)・サービスの運営や都市計画などに関して、政府に意見を陳述する程度の機能しか与えられていない。(Wikipediaから)

ただ、今回の区議会議員選挙が今までと大きく違ったのは、この区議会議員選挙が「逃亡犯条例改正案」反対運動として始まった2019年香港デモにおける香港政府の対応を問う「住民投票」的な様相を帯びていたことでした。

Contents

2019年香港区議会議員選挙前夜

今回の区議会議員選挙は、デモ側は地下鉄や親中派とみられる商店の破壊、意見が対立する市民に対する暴行、そして警察側もデモ隊に対する暴力を伴う逮捕、過剰な取り締まりなどが問題化する中で行われました。

特に11月8日には、デモに参加していた大学生が建物から転落して死亡するという事件が起きており、それ以降は毎日のように過激なデモ活動が繰り広げられました。(※自殺以外の死亡者が出たのは初めて)

これまでは週末だけだったデモ活動が平日にも行われるようになり、地下鉄の破壊から早朝の交通阻害などが行われ、地下鉄の運行が大きく妨げられ、人によっては出勤するのに何時間もかかる、という状況ともなりました。

また、デモ隊はこれまで香港の様々な地域で散発的にデモ活動を行って散っていくという「Be Water」作戦から、中文大学そして理工大学への立てこもりと大きく活動が変わっていきました。

そのような中で、もしかしたら区議会議員選挙が延期されるのではないかと騒がれたりもしたのでしたが、数日前にはデモ活動も落ち着きを見せ、何とか11月24日に無事に選挙が行われたのでした。

民主派が圧勝した2019年香港区議会議員選挙

このような緊迫した中で行われた区議会議員選挙、早朝から多くの市民が投票に出ていました。

私も香港永久居民なので投票権があるのですが、昼前に一度行ったらかなり人が並んでいたので、一旦あきらめ夜に改めて投票をしに行きました。

実際終わってみると、投票人数は前回4年前の2015年のなんと倍以上の294万人を超え、投票率も前回の47%をはるかに上回り1997年の香港の中国返還以来最高となる71%を記録したのでした。


(写真:アップルデイリーから)

さらに世界を驚かせたのが、その結果。

民主派の有利になるのではという予想はありましたが、なんと民主派が85%の議席を獲得するという圧勝となったのでした。

それまでは議席の7割を占めてい建制派(親中派)が一気に2割弱になって完全に状況が逆転してしまったわけです。

香港市民の「民意」としては民主派支持ということになったのでした。


(写真:立場新聞から)

2019年香港区議会議員選挙の結果は小選挙区制の弊害!?

結果として民主派の圧勝となったことには変わりませんが、無視できないのが得票率。

先ほどの表を見ますと、民主派の得票数が167万票で57%、建制派(親中派)が120万票で41%。

民主派の方が多かったのですが、得票率で言うとその差はそこまで大きいとは言えませんでした。

こうなった原因が香港の区議会議員選挙の方式「小選挙区制」にあったのですね。

日本でも小選挙区制はありますが、小選挙区制の場合、1つの選挙区で当選するのは1人だけ。

41%の得票がありながらも15%の議席しか取れなかった建制派(親中派)では大量の「死に票」が出てしまったわけですね。

ですから、純粋な「民意」という意味では、香港は真っ二つに割れてしまった、ともいえるのです。

これからはこの対立の溝をどのようにして埋めていくのか、というのが香港の大きな課題になると思われます。

また、民主派で当選した人の中には、政治経験などが全くない、いわば「素人」も少なくないため、彼らが香港のため地域のためにどれだけの働きをしてくれるのか、というのは注目すべきところです。

2019年香港区議会議員選挙で当落がわかれた注目人物

今回の区議会議員選挙で多くの民主派候補者が当選し、長年議員を務めていたベテラン議員が落選してしまったのですが、注目すべき人をいくつか挙げてみたいと思います。

黄之鋒(ジョシュア・ウォン)

まずは、2014年の雨傘運動の元リーダーだった黄之鋒氏。

彼の場合は、立候補の時点で選挙管理当局から立候補資格を認められず、立候補することができませんでした。

理由としては彼が「香港の将来は香港の市民自らが決めるべき(自決)」という主張をしていたことから、これが香港の憲法ともいうべき「基本法」と相いれないと判断されたことが影響しました。

岑子杰(ジミー・シャム)

次に、これまで香港の大型デモを主催してきた「民陣」のリーダー、岑子杰氏。

彼は、10月16日にはモンコックで襲撃事件に遭い負傷するという事件に見舞われましたが、沙田地区で当選しました。

何君堯(ユニウス・ホー)

今回の区議会議員選挙でも色々物議をかもす言動が見られた親中派の弁護士、何君堯氏。

何氏も11月6日には、男に刃物で刺されるという襲撃事件に遭いました。

彼は7月21日の元朗駅でのデモ隊襲撃事件でデモ隊襲撃を支持するような発言をしていたことなどが、民主派を支持する市民の怒りを買っていました。

結果、出馬していた屯門地区で落選。その夜には、何氏の落選を祝う集まりがかなり盛り上がったそうでした。笑

梁凱晴

また、この区議会議員選挙を通じて一部日本人男性の目をくぎ付けにしたのが梁凱晴さん。笑

 

デモ隊が立てこもったことでも知られる理工大学を卒業し、会計事務所で働く梁さん。

民主派候補として立候補し、見事当選。

今後の活躍が期待されます。

区議会議員選挙後の香港はどうなる?

このように民主派が圧勝となった区議会議員選挙ですが、その後の香港は一応落ち着いているように見えます。

一部地域でデモ活動はあるようですが、平和的な集会といった感じにとどまり、これまでのような過激なデモ活動は今のところ見られません。

また、アメリカで上院・下院で可決されていた「香港人権・民主主義法案」も27日にトランプ大統領が署名し、これに対して中国の大きな反発が予想される、などの不安定要素もあります。

さらに、11月29日時点で5800人以上となっているデモ隊の逮捕者ですが、最近になって裁判で判決が出ている人も出てきています。今後の裁判・判決がどうなるのかということも注目されます。

いずれにしても、11月に入って激しくなっていたデモ活動が区議会議員選挙をきっかけに落ち着きを取り戻していることから、私たち香港市民もつかの間の平和をかみしめているような状況です。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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