香港在住15年以上、国際結婚で英語、中国語(普通話・広東語)を中途半端に操り(笑)、香港が第二の故郷になっているトニー(@enjoyhklife)です。
(アイキャッチ画像は日経新聞(9月9日)/APから)
先週は、香港の逃亡犯条例改正案をめぐる情勢にも大きな動きがありました。
最初に紙面をにぎわせたのは、9月3日の林鄭(キャリー・ラム)行政長官による「選択肢があるなら、まず辞めて謝罪したい」発言のリークですね。
香港の経済人との非公式の会合だったそうなのですが、これが録音されていたようで、その音声がマスコミにリークされてしまったのです。
あとで、行政長官自身が発言は事実だが、中国政府に辞任を求めてはいない、と釈明していますが。
香港の行政長官って、香港政府のトップではありますが中国によって任命される、という形をとっている以上、その権限に中央政府から一定の制約を受けていると言えます。
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香港デモの発端となった逃亡犯条例改正案の撤回
そして9月4日、とうとう林鄭(キャリー・ラム)行政長官は「逃亡犯条例」改正案を正式に撤回するという声明を発表しました。
林鄭(キャリーラム)行政長官、「逃亡犯条例」撤回を表明。その他、五大要求の対応にも一つ一つ言及。暴力を止め、対話で解決を、と。#香港デモ #逃亡犯条例
[頭條日報] 【修例風波】林鄭電視講話公布「撤回」修例等4項行動 作為社會對話起點
— トニー@海外リーマン (@enjoyhklife) September 4, 2019
正確には、10月に立法会が再開されてから改正案撤回の動議を行う、ということだったのですが、実質的には撤回したと言ってもよいのではないでしょうか。
デモが要求している5つの要求のうち、デモのきっかけとなった逃亡犯条例の改正案が撤回ということとなったのです。
①逃亡犯条例改正案の撤回
②デモ行動を暴動と定義したことの撤回
③逮捕されたデモ参加者の釈放
④警察の暴行を調査する独立委員会の設置
⑤一人一票の普通選挙の実施
香港政府が逃亡犯条例改正案を撤回してもやまないデモ
しかし、「撤回の時期が遅すぎた」「『五大要求』のすべてが認められない限り、抗議活動は続ける」と言ったことからデモは継続。
また、デモ参加者の関心が当初の逃亡犯条例改正案の撤回から、デモ活動の中で発生した警察による暴力活動、そして政治的な改革へと移ってきている、というのは香港にいても感じます。
また、前回の記事でも触れましたが、デモ側と警察側それぞれによって暴力行為や破壊行為が行使され、それらが「何らかの意図」をもって、センセーショナルにメディアで報道されることによって、どちらが正しいのか、何が実際に起こっているのかが非常にわかりにくくなっています。
これらを解説しているのが、中国ルポライターの安田峰俊氏の以下の記事。
デモ隊と政府・警察支持側によるプロパガンダ戦争のような事態になっているとの主張は私としては説得力があるのではと感じました。
香港の現状を多面的な視点から理解する上で非常に有益な記事だと思います。
今の状況は香港に住んでいても、一般人には何が真実なのかわからない状況です。まさにプロパガンダ・ウォー。#香港デモ https://t.co/MsJY3oMMri— トニー@海外リーマン (@enjoyhklife) September 5, 2019
また、今回のデモ活動に関する社会学的な分析としては、立教大学の倉田徹教授による次の記事がわかりやすいかと思います。
香港「逃亡犯条例」改正反対デモ――香港の「遺伝子改造」への抵抗(倉田 徹) – ジェトロ・アジア経済研究所 https://t.co/f7kutUxmRT
— トニー@海外リーマン (@enjoyhklife) September 5, 2019
いずれにしても、このデモ、まだやむ気配がありません。。。
米国に支持を呼び掛けるデモ隊と、さらなる破壊。。。
さらに、週末にはアメリカ政府に対して香港の民主的発展を支持を要求する数万人規模のデモ行進がありました。
これはこれでよかったのですが、途中からデモ隊「勇武派」が中環(セントラル)の地下鉄駅の破壊行動などを展開。
セントラル駅はかなり激しく破壊されてしまいました。
#LIVE: A wall of fire created by protesters blocked one of the entrances to Central MTR station before a fire truck arrived to put it out https://t.co/PC7Da6gPqp #HongKongProtests pic.twitter.com/vYkdACHMVp
— SCMP News (@SCMPNews) September 8, 2019
これだけの大規模デモを展開しても「逃亡犯条例改正案の撤回」しか引き出せなかった、という焦りがあるのでしょうか。
もう、アメリカなどの外圧を加えないと自分たちの要求は通らない、と思っているような状況です。
これは、アメリカ議会で6月に提出されている「香港自治・民主主義法案」の早期可決を求めたもの。
しかし、この点についてはスタンダード紙が、「アメリカにおける法案の可決は香港にとって百害あって一利なし、改革は外側からではなく、内側から怒るべき」と疑問を投げかけています。
今後のデモの予定
先週から行われている学生によって、校舎の周りで手をつないで作る「人間の鎖」運動も続いています。
今後の日程は以下のように予定されていますが、正直その日になってみないと実際どのようになるかはわからない状況です。
(写真:在香港日本国総領事館ウェブサイトより)
当面、香港の今後の行方を見るうえでカギとなるのは、以下の2つの行事が香港においてどうなっていくのか、ということかと思われます。
- 9月11日から香港で開催される「一帯一路サミット」
- 10月1日の中国建国70年に当たる国慶節(建国記念日)
香港の実体経済へのマイナス影響が深刻
香港経済への影響も数字に表れてきました。
7月の来港者は前年比5%減だけだったのですが、8月はなんと前年比40%減。
ホテルの稼働率も8月は例年の半分になっているホテルもあるとのこと。
ホテルの部屋の価格も40~70%減少しています。
現在香港が直面しているのは、デモ活動によるものだけではありません。
米中貿易摩擦によって、中国からの輸出入も影響を受けています。
上半期6か月の中国から香港を経由して米国への輸出量は前年比15.2%も減少しています。
さらに大手格付け会社のフィッチレーティングスが、香港の外貨建て長期債の格付けをAAプラスからAAに格下げ。
今後の見通しもネガティブとしました。
デモが長引けば長引くほど、じわじわと香港の実体経済に影響が出てきてしまうことが見て取れます。
やはりデモにおける、デモ隊、警察双方による暴力・破壊の停止、対話による早期解決が望まれます。。。
(上記内容は、以下のスタンダード紙の記事を参照)
デモ活動だけではなく、米中貿易摩擦の影響もあり、経済への打撃は香港にとっダブルパンチです。。。
No peak as visitor numbers slump 40pc https://t.co/9RM8tQohJe— トニー@海外リーマン (@enjoyhklife) September 9, 2019
香港の情報を得るための情報源
先日の記事でも掲載しましたが、香港の最新情報を得るための情報源をいくつか載せておきます。
★在香港日本国総領事館:「新着情報」欄で、デモに関する注意喚起を見ることができます。
「香港における今後の主な抗議活動や関連情報等」でデモが行われる予定の場所が見れますが、実際にデモが行われる場所は非常に流動的で、当日になってみないとわからないというのもありますので、最新の情報を得る必要があります。
★香港蘋果日報:香港の大衆紙「蘋果日報」のフェイスブックサイトです。中国語。リアルタイムの状況が確認できます。
言語は中国語ですが、リアルタイムでの状況がアップされていますので、デモが行われれている場所をグーグルマップで確認しながら、デモの場所を避けましょう。
★香港国際空港:画面上の「Important Notice」で注意情報が見れます。
★香港MTR(地下鉄):「Service Status」から運行状況を見ることができます。
香港にいらっしゃる際は、どうかお気をつけて香港の滞在をお楽しみください。
私の大好きな香港が一日も早く安定した状態に戻ってくれますように。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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