海外在住が長いのに日本の2級FP技能士資格を持っていて、資産運用にもちょっと携わっているトニー(@enjoyhklife)です。
老後資金2000万円不足問題を皮切りに、急速に年金以外の方法で老後資金を貯めることに注目が集まってきています。
また、老後資金を作るためのシステムも出来上がってきていて、その中核となっているのが「NISA(ニーサ)」や「iDeCo(イデコ)」となっています。
その中でも「つみたてNISA」はその節税効果、始めやすさから注目されています。
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つみたてNISAの最大のメリットはドルコスト平均の効果
「つみたてNISA」は文字通り、つみたて方式で資産形成を行っていくもので、毎月100円からなど、小額からでも積み立てることができます。
また、積み立てできる商品(ファンド)も厳選されているので、選択しやすくなっています。
・投資初心者の方
・少額でコツコツ積み立てたい方
・商品を選ぶのが苦手な方
そして、運用面でのつみたてNISAのメリットはなんと言っても、毎月同じ金額を積み立てることによって得られるドルコスト平均の効果です。
買いのタイミングを分散することによって買い付け単価を平均化することができるのです。
ドルコスト平均法とは?
「ドルコスト平均法」とは、決められた金額を、選択した商品に対し、同じ頻度で(例:毎月第3営業日)に、買い付けをしていく運用を言います。
金額が決められているので、価格が高い時には少なく、価格が安い時には多く買うことができます。
また、決められた頻度で継続して買い付けをしていくので、買い付けのタイミングを分散することができます。
逆に、積立ではなく一括で購入する場合は、勝った時のタイミングが非常に重要となります。
しかし、どの価格で買ったら良いかを見極めるのはプロの運用担当者でも簡単なことではありません。
ですから、一括で買うときの「高値づかみ」をしてしまうリスクを抑えるために、積立をすることが大事なのですね。
ドルコスト平均の前提は長期でみて右肩上がりであること
さて、積立をすることでドルコスト平均の効果が得られることはわかったのですが、ドルコスト平均はどのような状況であってもよい方法なのでしょうか。
ドルコスト平均のメリットを享受するためにとても重要な前提があります。
それは、積立する商品の価格が中長期的に見たら右肩上がりに上がっているということです。
相場ですから、途中で価格が下がることは当然あるでしょう。
でも、中長期的に見て、積立している商品に組み入れられている市場が成長・拡大していれば、結果的には右肩上がりになっているものです。
下のチャートを見てみてください。
緑と赤で作られている線(キャンドルスティックといいますが)と青のラインで作られている線の比較です。
期間は1999年から2019年の9月までの約20年間です。
キャンドルスティックの銘柄は、この20年間で234%の増加(年利約11%)、対する青線の銘柄は20年間で20%の増加(年利1%)となっています。
全然パフォーマンスが違いますよね。
実は、キャンドルスティックはアメリカの代表的株価指数である指数S&P500の動きで、青線は日本の代表的株価指数である日経平均株価なんですね。
アメリカ市場の場合は、途中で2001年のITバブル、2007~2008年のサブプライム危機からリーマンショックを経験しながらも、直近10年で大きく株価が上昇しました。
しかし、対する日本は、失われた20年とも30年ともいわれていますが、直近20年間でたったの20%(年利1%)しか上昇していなかったのです。
これでは、株式投資でとっているリスクと得られたリターンが全く見合っていません。
ドルコスト平均のメリットを享受するためには、日経平均株価のようなものに積立投資をしてもほとんど意味がなかったことになります。
途中、下落を経験しながらもアメリカ市場のように中長期で成長して価格も右肩上がりで成長している商品を選んで積み立てることがとても大切なんですね。
ドルコスト平均の落とし穴とは
このように、つみたてNISAだったら、ドルコスト平均だから長期的にはプラスになるから大丈夫、と思っていても、結果的に資産が全然増えていなかったとあっては、目も当てられません。
つみたてNISAで商品を選ぶ際に気を付けなければいけない点が2つあります。
- 積立をした商品が投資をしている市場が成長しなかった
- 積立の終盤でマーケットの大きな下落を経験する
①積立をした商品が投資をしている市場が成長しなかった
積み立てで投資をするからタイミングもリスクも分散できて、中長期では絶対上がるはず
そんなことはありません。
ちゃんと成長する市場や商品を選ばないと、上の日経平均株価のように20年も積み立てても年利1%でしか資産が増えなかった、ということになりかねません。
年利1%って債券で得られるリターンと比較しても低いです。
日本人だから日本株にしようといったこだわりも捨てて、長期的に資産を増やすためにはどの市場を選んだらよいかを考えて商品を選ぶ必要があるのですね。
②積立の終盤でマーケットの大きな下落を経験する
もう一つの落とし穴は、一度選んだ株式ファンドへの積立を20年間ずっと続けていったとき、18年目や19年目のような積立期間の終盤でリーマンショックのような相場の下落を経験してしまうと、積立をした分の時価が大きく減少してしまうことです。
上の日経平均株価のチャートからも見て取れるように、これでは20年後に現金化したときにも、ほとんど増えていないどころか、下手するとマイナスになってしまっている可能性も出てきます。
しかし、マーケットの危機を完全に見通すことはプロの運用担当者でもそう簡単にできることではありません。
それができないから積立をしてドルコスト平均の効果を得られるようにするのですが、せっかく積立でコツコツ積み立てていっても、もうすぐ積立期間が終わるから現金化しようか、という時に相場が大きく崩れてしまったら元も子もありません。
ドルコスト平均の落とし穴を回避する方法
だったら、ドルコスト平均も決して良い投資方法とは言えなんじゃないかと思われるかもしれませんが、ちょっと工夫して投資をすることでリスクを抑えることができます。
①世界株式市場全体への積み立てで分散する
上のチャートからもわかるように、日本人だから自分もよくわかる日本株のファンドに積み立てをしよう。
アメリカ株や市場のことはよくわからないから、やっぱり日本株の方が安心できる。
これらは気持ちとしてはよくわかりますが、運用面から言ったら必ずしも正しいとは言えません。
専門的には「ホームバイアス」といって、日本人であればどうしても自分の投資の中で日本株の比重を大きくしがちである、ということを言っています。
もちろん日本人だけではなく、香港だったらどうしても中国株の比重が大きくなってしまう人も多いです。
ただ、運用の目的は中長期的に成長する場所に投資をして資産を増やすことですから、日本にこだわる必要は全くありません。
よくわからなければ、グローバルに分散されたファンドに積立をする、というのが一番良い選択肢だと思います。
つみたてNISAで積立可能なファンドについては以下で解説しているので興味があればご覧ください。
②積立のライフサイクルに合わせて株式の割合を下げていく
また、どうしたら積立期間終了間際での相場の下落を防げるかということですが、積立期間の終了が迫ってきたら、積み立てる商品から株式の割合を減らす、ことで時価の下落を抑えることができます。
つみたてNISAのように積立期間が最長20年となっている場合だったら、例えばですが、以下のようにすることもできます。
積立期間 | 株式の割合 | 債券の割合 |
開始~10年 | 100% | 0% |
11年~14年 | 70% | 30% |
15年~18年 | 60% | 40% |
19年~20年(積立終了) | 30% | 70% |
上記はあくまで一例なのですが、ポイントは積立期間が終了に近づくにつれて、株式のように変動が大きい商品の割合を減らし、債券のように変動が比較的小さい商品の割合を大きくしていく、ということです。
それによって、積立期間の終盤で株式市場の大きな下落を経験したとしても、積み立てた分への影響をある程度抑えることができます。
これは、以下の記事で、資産運用とライフサイクルということでも解説しています。
まとめ
ドルコスト平均は、初心者が資産運用をする上で、非常に取り組みやすく、またリスクも抑えられた投資方法なのですが、ちょっとした注意をすることで、運用効果をさらに上げテイクいことができます。
是非、つみたてNISAにおける効果をできるだけ高めていけるよう、ちょっと工夫して積立に取り組んでみてください。